ネタバレも辞さない本音♯1

『さよなら神様』麻耶雄嵩

評価 3.1

1行目から犯人が明かされるミステリーと聞いていたので、物語の醍醐味は謎解きではなく、事件当事者達の感情はたまた裏設定裏事情真実なのかなどと予想しながら読み始めた。一つ一つは繋がりのある短編小説がいくつかあってそのどれもが最初に犯人の名前が明かされているという形式であった。

ある小学校に転校してきた鈴木という少年が自己紹介で神を名乗り人を超越した力を発揮し未来を言い当てるという時点であまりにもぶっ飛んでいる。道尾秀介の『向日葵の咲かない夏』が思い出された。

まずどの事件も全て殺人事件というところが舞台設定とあっていないと感じた。たとえ小説の中とはいえ小学校で同じクラスの児童がここまで何人も連続で死んでさらにその犯人がほとんど知り合いの中に収まっているとはもはや呪いでしかない。

物語は鈴木に犯人を教えてもらった主人公がその真偽を確かめるために所属している探偵団のメンバーと共に調査するという流れで動いていくが、彼らが小学生ということもあって方法、考える範囲にバリエーションがなく単調で途中で飽きが来てしまった。

さらに一つ一つの物語で犯人が本当にその人物なのか明らかにされないことが多く、多分こうじゃないかなという考察のみで終わるためスッキリ感がなくまた、神様の絶対性が弱まるところも読者を置いてけぼりにしていると感じた。

名前が女性か男性かわかりづらく、一人称が「俺」であることから主人公の性別を男だと錯覚させつつ、文章のところどころに矛盾を散りばめることで伏線を張るところは上手いなと思ったが途中で飽きたのかバテたのか女性であるという事実のバラし方が下手だと感じた。せっかく美味しいところでただ事実を露見させただけというのはもったいない。

また、最後の場面で後日談のように回想+その後の話で主人公が全く変わってしまったシーンでは変わり具合で恐怖を感じさせたかったのかどうかいまいち分からなかった。どちらかといえばキャラぶれぶれの女に見えてしまった。

かなり酷評してしまったが、最初で犯人が明かされるという着想は斬新で、またそれを知らせるのが神様という設定は奇想天外で素晴らしく一読の価値はある。しかし期待しすぎたせいか小説として設定負けな感が否めないのでもっと温めてからでも遅くはなかってのでないかと少し残念である。

 

追記

前作があるらしいので読んでみようと思う

 

3199/1000000