『続いては新婦の友人代表のスピーチです』
「じゃ、ちょっくら行ってくるわ」
俺は一緒に来ていた友人達にそう声を掛け、ゆっくりとした足取りでマイクの方へと歩き出した。
今日は生まれた時からの幼馴染である美由紀の結婚式だ。
小さい頃の俺と美由紀は何をするにもいつも一緒でまるで本物の兄妹のようだった。
成長してからもお互いの本音を話せるような関係で、所謂"友達以上恋人未満"ってやつだ。
結婚式の参列者達は友人代表だと思われる俺をバラバラの拍手で迎えてくれている。
マイクまでのまっすぐな道を歩く自分はまるでスローモーション映画のように感じた。
美由紀は結婚に至るまで実に色んな男と付き合ってきた。飽きっぽい性格からかすぐに愛想をつかしてしまい別れを切り出すのだ。だから今回もそうであると勝手に思っていた。
ふと俺は新郎新婦の席の方に目をやった。
好きな人を手に入れた男の幸せで歪んだ顔と、ジェスチャーで「がんばれ」と伝えてくれている美由紀の世界で一番遠い笑顔がぼんやりと見え、俺はゆっくりと視線をマイクの方へ戻した。
なんでも言い合ってきた仲だが1つだけずっと言わずに隠してきたことがある。
言ったからといって何かが変わるものではないし、また言わなかったからといって何か問題があるわけでもない。
だからこうしてこの日が来るまで言わなかったわけなのだが。
ようやくマイクにたどり着いた俺はずっと片思いし続けてきた相手への気持ちを捨てるべく口を開いた
「ただいまご紹介に預かりました、"友人"代表の…